ふと、思ったこと




「ねえ、真田の旦那」

「何だ、佐助?」

「俺が孕んだら、どうしますか?」


帯を解いていた主の手が、一瞬止まる

微妙な沈黙が部屋を満たした


「………危険日か?」

「いえ、暫くは大丈夫ですけど」


では何故?と訝しむ目

この先にある行為への、遠回しな拒絶かと




理由など特になく


きかっけも取り立ててない


まして主の寵を拒むなど、外道の俺に出来る訳もなく




「貴方がどうするんだろうと、思っただけですよ」



ただふと、思い浮かんだ疑問であった



「やっぱり、堕ろしますか?仕事に支障が出ますし」

「佐助」

「それとも、産んで早々に手放すか、手元に置いて『仕込み』ますか?」

安心して下さい、御家を乱す事だけはしませんから

「佐助っ」


強い、旦那の声



「どちらにしても、俺の存在が貴方の負担になる」



俺にはそれが耐えられない



だからそうなったら、俺は貴方から離れよう



遠く、遠くへ



「何故、そんな悲しいことばかりを言う?」

「実際問題そうだからですよ。子が出来てそれで仕舞いじゃないですから」


特に俺のような存在は


「………どちらかを選ぶだけでしょう?」

「堕ろすことも手放すことも、俺はどちらも選ばぬよ。

お前は何も気に病むことなく、俺の子を産み育てれば良い」

「―――」


何も、返せなかった。

あまりにも、旦那が当然のこととして言ったから。


「俺を信じろ」

「信じてどうにかなるのですか?」

「さあな。それでも、子を殺すことも手放すこともしないようにはするつもりだ」


だから、馬鹿なことは考えるなと旦那は言った。


「それと」


ぐっと顔を近づける。吐息が触れ合うほど側に。


「佐助は俺の忍だから総じてその腹の子供も俺のもので、決めるのは俺だ。

負担になるからと、勝手に子を堕ろすこともお前が消えることも許さぬ」



簡単に、見破られている

けれど、それは当然のこと

消えることなど許されない

離れることなど許されない


私は貴方の所有物

それが私の誇り



「はい」


素直に返事をすると旦那は、「それで良い」と口付けをして褒めてくれた

それが堪らなく嬉しかった


ベビーベッド















後書き

突発的にネタが降ってきました真田主従(幸ニョサス)。イメージはCoccoの 「ベビーベッド」より。あそこまで重く書けない腕の無さorz
基本拙宅の(チカサス前提)幸村は佐助のことを自分の所有物ではなく、 時には佐助が傷付くほど良くも悪くも一人の人間として見ています。 ので、今回の主従はまあ、また別物です…。
実は当初、幸村でなく独占欲満々な信之兄様で行こうと思っていました(自分、之佐もアリです) が、結論の出し方が幸村に向いていたので現状に。未だにキャラが固定しない(遠い目)

ここまで読んで頂き、有り難う御座いました。







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