サシで呑む時は気を付けないと
妙に感傷的になって
自分で自分が何を言い出すのか分からないし
アンタもとんでもないことを言い出すから












 戯言にも寝言にもならない暴言












悪酔い気分で語ってみよう
例えば例えば、自分がどんな死に方をするか


戦さ場で討ち死にか

任務にしくじって敵に消されるか

どちらにしたって、どうせロクな死に方はしないと覚悟してる
(大穴で大往生もあるかもしれないけど)



そんな中に、この嘘のように平穏な同盟が崩れて、甲斐と四国が戦をした場合


俺は真田忍隊の長として
アンタは四国の主として


当然戦う訳で 殺り合う訳で
俺がアンタを殺すことも、アンタが俺を殺すことだってある
それ以外も、ね


ありえねぇなって、アンタは言うかもしれない
けど、何でもアリなこのご時世だ
だから先に言っておくよ

遺言だよ



首はアンタが討ち取って
どうか海に流してよ



この雁字搦めな主への忠義心は変えられないから
差し出すものが首なのが、俺に出来るアンタへの最大限の誠意だ

だからさ


どうかどうか 首はアンタに
どうかどうか アンタの手で
どうかどうか 海底/うなそこへと

流して沈めてよ











そんな懇願を囁いてみたら、真向かいに座るアンタは一笑して


「嫌だね」


なんて言いやがった
そうして続けて、俺が何か言い返す前に


「俺とお前が殺し合ったらだって?そんなの決まってる
有無を言わさず問答無用、即断即決でお前をかっさらって逃げてやる」


とうとうと



戦も国も煩わしいもんは全部かなぐり捨てて
お前がどんなに泣いても喚いても、離したり殺したりなんかしてやらねぇ

舌をかみ切らないように口を塞いで

逃げ出さないように手枷足枷をして

そうだ、いっそ首輪も付けてやる

南蛮渡りの上等な、お前に似合う色を選んで


そうしてそうして、船に乗り込んで外の世界を目指すんだ
手始めにどこに行く?
お前が行きたいとこに連れてってやる



とうとうと とうとうと
呆れかえる程荒唐無稽な暴言を、笑いながら吐きやがった



「一度手に入れた宝を、俺がわざわざ手放す訳ねぇだろ?」



普段見せる快活なそれではなく


姫のように嫣然と
鬼のように妖艶に


笑いながら
嗤いながら
咲いながら



身勝手で、わがままで、優しすぎる夢を語りやがった











サシで呑む時は気を付けないと
妙に感傷的になって
自分で自分が何を言い出すのか分からないし
アンタもとんでもないことを言い出すから


けど、気付いた時にはもう手遅れ




その暴言/夢が嬉しすぎて、俺は泣きたくなった



















後書き

チカサス祭出品2本目のssでした。作成順に直すと「香」→「無名」→「戯れ言〜」→ 「十二月の〜」となっております。
この時は珍しく短くまとまっていて、常にだらだら書く自分としては気に入っている仕上がり です。一人称を取り入れたのもこの頃からなので、色々思い出深い話。
2曲合わせた歌インスピから来てまして、作中の佐助の心情はCoccoの「首」、チカは 同じく「走る体」より。どちらも愛故に狂気がかった雰囲気で。
拙宅の二人はそれぞれ悲観主義と楽観主義の極地な組み合わせで、常に佐助はチカの 自分にない選択肢を示されることで救われてたら良いな、と言う希望から。


ここまで読んで頂き、有り難う御座いました。




main  Top